現代民俗学会第66回研究会/東文研セミナー「民俗芸能とヴァナキュラー芸能のあいだ」で「「新しい(民俗?)藝能」について」という発表を行います。
http://gendaiminzoku.com/meeting.html#meeting66
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/news/news.php?id=MonJan231022262023
演劇研究者の私はこの数年、1980年代以降の地域市民演劇の動向について同僚たちと調査分析を行ってきた。敗戦直後から1970年代まで隆盛を誇ったアマチュア演劇と異なり、地域市民演劇は(1)市民ミュージカルや宝塚(歌劇)フォロワー、やくざ芝居やネオ神楽といった、新劇以外のジャンルが主流となっている、(2)従来からあった「お稽古事文化」「発表会文化」と合流し、公教育とは異なる価値観や実践をともなう「教育」が行われている、という特徴がある(『「地域市民演劇」の現在』森話社、2022年)。だがさらに研究を進めるにつれ、これはむしろ「地域市民演劇」ではなく「新しい(民俗)藝能」と呼んだほうがいいのではないか、という事例に数々出会うようになった。本発表では、現代版組踊やナゴヤカブキなど、「新しい(民俗)藝能」だと私たちが考えている事例をいくつか紹介し、その背景にある世界観(cosmology)を見る限り、それらを「演劇」ではなく、「(新しい)(民俗)藝能」と呼んだほうがいいのではないか、という仮説を提唱する。さらにこうした「新しい(民俗?)藝能」には「小商いの藝能」と仮に名付けるものも含まれていることについても付言しておきたい。民俗学研究者のみなさんには珍妙に聞こえるやもしれぬ議論を開陳するにあたって気後れもあるが、専門的見地からの忌憚のないご批判・ご助言をいただきたく、敢えて出張る次第、ひらにご容赦いただければ。